「マルチモーダルAIがあればOCRはもう要らない」とよく言われます。私の意見は、半分は賛成で半分は反対です。レイアウトが毎回違う書類を読むのは、確かにAIが得意です。ただ、定型の帳票を安く正確に読むだけなら、従来のOCRのほうが運用しやすい場面が残っています。
始める前に決めること
対象は、レシート、請求書、図面のどれかひとつに絞ります。次に、間違えてはいけない項目を決めます。たとえば金額と日付は一文字の誤りも許さず、店名は多少ずれてもよい、といった線引きです。そして、人が確認する場所を最初から置きます。誤りゼロを前提にした運用は、早い段階で壊れます。
進め方
手順は次のとおりです。
- 実際の書類から、きれいなものと汚いものを混ぜて数十枚そろえます。
- 既存のOCRとAIに同じ書類を読ませ、項目ごとに正解と比べます。
- 出力は項目名を固定したJSONにそろえます。
- 合計金額と明細の合計が合うかを機械で検算し、合わないものだけ人に回します。
たとえば月に300枚のレシートを処理するとします。全件を目で見る必要はありません。検算で外れたものだけ見れば足ります。
つまずきやすいところ
いちばん厄介なのは、読めない文字をもっともらしく補ってしまうことです。OCRなら文字化けで異常に気づけます。ところがAIは、自然に見える数字を返します。見た目では誤りに気づけないため、検算が欠かせません。
図面では、寸法線と数値の対応を取り違えることがあります。モデルの更新で出力の癖が変わることもあるので、比較用のサンプルは残しておきます。画像に個人情報が写る場合は、送信先と保存期間も先に確認します。
次の一手
結論は、置き換えではなく併用です。定型部分はOCR、崩れた書類や意味の解釈はAIに任せ、検算で漏れたものを人が見る形が現実的です。まずは人の確認に回った件数を数えてください。その数が減っているかどうかが、続けるか見直すかの判断材料になります。